読影医というお仕事について

まず大前提として医者(医師)です。よく勘違いされるのですが、歯科医、歯医者は医者ではありません。医師は医学部6年卒業後に医師国家試験合格で医師になります。歯科医は歯学部卒業後に歯科医の国家試験合格となります。医師は身体全身の医療行為が可能です。歯科医は歯、口腔内の専門で他領域は診れないと思います。しかし口は喉、食道などと繋がっており全く関係ないとも言えませんし、麻酔をして歯科治療もあり、全身を診る必要性も生じうるのでそれらも勉強しているはずです。

話を戻しますが、医師は医師国家試験合格で医師の資格は得ますが、初めは初期研修医として2年間働きながら勉強します。

20年ほど前までは、医局制度が横行し、専門の科(消化器内科、脳外科、眼科など)を選び、大学の医局へ入局し、最も下っ端としてスタートしていました。当たり前ですが、学生がただペーパー試験に受かっただけですから、専門どころか一般的な医療行為も素人です。任せられる仕事はほとんどありません。先輩医師、上級医の下で学びながら成長します。仕事が出来ない以上人件費の削減をしたい病院としては給料をほとんど出せません。ほぼ無給となります。1ヶ月ほとんど休み無しで働くのが当たり前で月給4万とかです。それで生活はもちろん出来ません。さらに医師の専門書などは1冊1万〜6万とかです。私も若い頃は月に20万円ほど本代に掛けたこともあります。知識が必要だからです。ではどうやってお金を稼ぐのか、答えはバイトです。寝泊まりの当直をし、数万円稼ぐのです。しかし、ほとんど医療行為も出来ないのに1人で寝泊まりで病院を任せれることにより、精神を害したり過労、鬱などで研修医が亡くなることがありました。

そこで20年ほど前に出来たのが初期研修医制度「スーパーローテート」です。
入局はせず、2年間はいろいろな科を周り医師としての最低限の知識、手技を得る。必ず指導医が付き1人で医療行為をさせない。研修医として最低月給(多分20万)を与え、バイトを禁止する。こうすることで、オールマイティな医師が育ち、過労もなくなると期待されスタートしました。私もこの初期研修医制度でした。

この2年間の研修医を終えると保険医として登録出来、1人で保険診療を行えるようになります。

そしてようやく自分の進みたい専門を選択し入局する医師がほとんどです。入局の他にも学べる病院に残るとか入局し大学院生になるとかいくつかバリエーションはありますが、私の場合は「入局」でした。

私が選んだ大学病院の医局はPET癌診断、研究、核医学診療を専門としていました。PETに携わりたくて医師になった私にとってはベストの医局です。

タイトルに戻します。
読影医というのはドラマ「ラジエーションハウス」でも知られるようになりましたが、CT、MRI、PETなどの画像検査を見て、診断レポートを書くという仕事です。画像を撮像するのは放射線技師で、その画像を読影する医師を放射線科医(画像診断医、読影医)と言います。

例えば、肺癌の患者が居たとします。治療方針を立てるにはステージを診断しなければいけません。端的に言えば、浸潤や転移していないかなどを見極める必要があります。そこでCT、MRI、PETなどの画像検査をしますが、主治医は肺の専門です。頭や腹は苦手です。そこで我々読影医が代わりに画像を見て診断しレポートを書きます。「脳転移が疑われます」「初見はあるけど転移は無いです」など。これを主治医が読んで最終的に診断をつけて患者に説明し治療方針が提案されます。

では、どうすれば読影医になれるのか。放射線科に入局し画像診断の修練を積むことになります。毎日数十件の画像を読み、レポートを書き、上級医に直され、専門書で勉強し知識を増やす。当たり前ですが、人の身体を熟知しておく必要があります。次に病気による画像上の特徴を覚える必要があります。さらに同じ画像でも、背景の病気、年齢、性別などでも診断が変わりうるので、病気の知識も必要になります。これらの自信がつけば1人で読影する医師になれます。

読影医は、1人で読影室に篭ってひたすら画像診断レポートを書いてますから、患者と会うことはほとんどありません。白衣を着ていない医師もいます。一方で、他科の医師とはよく会います。「読影して欲しい」「この画像どうですか?」「早く読影を、レポート見て患者に説明するから」など。医者から頼られる医者が読影医です。病院のレベルは優秀な読影医がいるかで決まるとも言われるくらいです。

読影医というちょっと特殊な医師について理解頂けたら嬉しいです。

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