癌は誰にでもなりうる病気です。むしろ癌にならない方はいません。癌以外の病気、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、心筋梗塞などにより癌が見付かる前に亡くなっているだけです。生きていれば必ず癌になります。
感染症はその原因となる細菌、ウイルスに罹らなければ感染しません。
高血圧、糖尿病、高脂血症、いわゆる生活習慣病は、食事、運動などで防げることが多いです。
遺伝性の疾患、遺伝子に起因する疾患は産まれて来た時にほぼ確定しています。
癌以外の病気は避けられるもしくは初めから掛からないと決まっている病気がほとんどです。一方で癌は、我々の生きている細胞が無限増殖という能力を得たことで癌化したものです。生きていれば必ず発生するのです。
これはもちろんなりやすい人、いわゆる癌家系というのもありますが、ならない人というのはありえません。
よって、一般の方はもちろん、医師も芸能人も偉大な偉人も癌になります。
ですから、ニュースで歌手の⚫⚫さんが喉頭癌になったなどと聞いても「声帯使って炎症もあった」「酒、タバコ好きと聞いてた」と思い、何ら不思議に思いません。
今井雅之さんという俳優さんが何年か前に大腸癌で亡くなられました。記者会見で激ヤセし歩けなったのはインパクトがありました。私の記憶では自衛隊出身で漢気ある口調、行動な強い男性のイメージでした。それが別人のように弱々しくなっていました。医者なら全員「大腸癌であの状態なら、かなりの末期、歩けないのは多発骨転移はある、余命1ヶ月あたりか」と答えるでしょう。もちろん私はCTなどの画像を見ないと診断はしませんが、画像読む前にある程度それらの病変(多発骨転移、他全身の転移)を見るつもりで読影します。
その後治療のかいなく亡くなられたかと思います。
後日の記事で「大腸癌が初め腸の風邪と誤診されていた!」というのを見ました。これを見て一般の方はどう思われますか?
私の見解、推測を述べます。下痢や腹痛で受診され、まずはよくある病気、腸炎を考えます。主治医はいきなり大腸癌とは言いません。「腸の風邪(腸炎)だとは思うが続くようならまた来て」と再診を促したはずです。ここで1ヶ月後に再診していれば、「1ヶ月後も続く腸炎はおかしい」とCT検査を行い、「大腸に壁肥厚が見られ、大腸癌を疑う」とレポートします。おそらくこういう経過だったのではないでしょうか。これは誤診ではありません。初めから大腸癌疑いにしてしまうとほとんど皆さん過剰な検査だらけになりますから。しかし、腸炎疑い100例に1例大腸癌が紛れ込んでくるのです。これをどう早期診断するかが肝要ですね。
もし、もっと早く受診、再診、検査していれば予後は違っていたかもしれません。
川島なお美さんが胆管癌で亡くなられたのを記憶されている方もいるかと思います。初め検診で「胆管に異常あり」と指摘されるのですが、精査の結果、診断が付かず「悪性の可能性があるから手術で取りましょう」と提案されたそうです。胆管というのは非常に小さな管です。この管の壁に癌が出来ることがあります。酒がリスクです。そしてこの胆管癌は小さいと画像では本体を指摘することは出来ません。しかし胆管が詰まりやすくなりますから、より上流の胆管が拡張し指摘されるのです。
つまり、胆管拡張が見られるので胆管に病変があると推測される。しかし、それが胆管のどこかもわからず、大きさも良悪性もわからず、取るしか判断出来ないという状態だったかと推測されます。私もよく経験します。
残念ながら、川島さんは、「悪性かもわからないのに手術するのはダメ医者だ」と他院へ行ってしまいます。しかしそこでも同じように説明され、結局一年以上さまよったそうです。そして、最後に見た医師が「これは胆管癌で間違いない」と診断します。彼女は名医に出会えたと喜びますが、記者会見では激ヤセしやはりすぐに亡くなりました。
一年以上かけてしまったことで、胆管癌が進行し、目に見えない大きさから、誰でも見える大きさまで悪化し、末期癌となったのです。
もし、初めの医師の提案で手術されていればおそらく助かったでしょう。非常に残念です。
皆さんも是非、検診を受け、仮に指摘されても医師がいろいろな可能性のうち最も疑わしいことから話していると理解され、よくよく話を聞くようにしてください。
そして、症状が続く、悪化する場合は、誤診ではなく、その情報を伝え医師の診断を聞いて下さい。悪質な医者を信じては困りますが、ほとんどの医者はちゃんと仕事しています。
よろしくお願いします。