PET検査の有用性

20年ほど前からFDG-PET検査が全国的に出来るようになりました。当初保険適応は10種類ほどの癌でしたが、現在では

・すべての悪性腫瘍、ただし早期胃がんは除く

・心疾患

・てんかん

・大型血管炎

と拡大されています。個人的には不明熱、サルコイドーシス、IgG4関連疾患などは良い適応と思いますが、この話も後日に委ねます。

今回は癌に対してのPET検査の有用性です。

保険適応としては他の画像診断では判然としない場合に癌の病期診断としてPET検査が推奨されています。悪性リンパ腫については治療効果判定、つまり治療前のPETで病期診断し、治療後に改善したかをPETで再検査することが認められています。

「内視鏡で大腸癌と診断がつきましたが、治療前に遠隔転移の確認をPETでしたい」

という風に確定診断がついて病期診断目的のみの依頼だけではなく、実際の臨床の現場では、

「検診のCTで肺癌を疑う所見が見つかったが、PETではどうですか?」

「多発するリンパ節腫大があるが、PETでは悪性リンパ腫を考えますか?」

などの依頼があり、癌かどうか診断に苦慮している段階でのPET検査の依頼も多いです。

まず局所の評価ですが、PET検査の有用性はそれほど高くありません。癌かどうかの診断は炎症でも集積がある以上、絶対に癌と診断するのは不可能です。また画質が通常のCTよりも劣りますから、正確な大きさや重要な臓器や血管などに浸潤しているかはPETでは評価困難です。

次に転移の評価ですが、PET検査の有用性は高いです。リンパ節転移、遠隔転移いずれも検出が可能ですし、CT検査では見落としてしまうような想定外の病変をPETだけが指摘することもしばしばあります。全身を一目で確認できるというメリットも大きいです。

再発の評価ですが、こちらもPET検査の得意とする点です。CT検査では不変な病変がPETでは集積ありで、実は再発が隠れていたということがあります。

治療効果判定ですが、PET検査は有用と考えます。特に悪性リンパ腫のように全身性の疾患ですとCT検査で一つずつ病変の大きさを前回と比較するのは大変に面倒です。頚部のリンパ節、腋窩のリンパ節、縦隔のリンパ節、腹部のリンパ節とそれぞれ並べたりサイズを測るのは大変な作業です。しかし、PET検査であれば、MIPという全身の画像一枚でだいたい「完全に消えた」「ほとんど治ったが一部残っている」「ほとんど変わらない」「むしろ増悪している」など一瞬で評価出来ます。またSUVmaxという集積を数字化したパラメーターを使えば比較、評価も簡単です。最近ではMTVやTLGなどSUVmax以外のパラメーターも出てきましたが、こちらは後日説明します。またCT検査では病変の大きさが変化していないのにPET検査では集積が非常に低下し、活動性が低下したと治療効果を判断することもできます。

結語

小さな病変や細かい評価はCT検査などに劣りますが、CT検査で得られない情報や想定外の病変の指摘にはPET検査が有用。特に全身の評価、転移、治療効果判定、再発にはPET検査が必要と考えます。

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