乳癌検診の海外研究報告の紹介

2021年3月発表の論文。
スェーデンで55万人を対象にマンモグラフィー検査と乳癌患者約5万人の死亡率について20年以上追跡した研究。
マンモグラフィー検診を直近2回受けた方は10万人当たり約28人死亡、受けていない方は約56人死亡しており、マンモグラフィー検診を受診しない場合には乳癌の発見が遅れ、死亡率が2倍になることが証明された。

以下私見を述べさせて頂きます。

よく「PETがん検診は意味がない」とか「がん検診では見付ける必要のないがんばかり見付けている」とか「PETやCTやマンモグラフィなど放射線を使うがん検診では被爆によりむしろがん患者が増えている」などなど、がん検診に関してネガティブな書籍、動画を見掛けますが、上述のような対象数が非常に大きい研究で結果が出るとどちらが正しいのか納得出来ます。

「PETがん検診が無意味」という意見は、PETがん検診をして寿命が延びたかどうかの結果で比較してしまうと有意差無しとなることを根拠とされていることが多いです。PETがん検診ではだいたい1から3%ほどの方に癌が見付かります。私の所属するクリニックでも2%ほどで妥当な数字と思います。しかしこの僅かに2%の方の癌が早期で見付かり早期治療となり癌を克服しても残念ながら98%の方々の平均寿命に変化をもたらす程は影響しません。例えば100人の平均寿命が元々80才とします。PETがん検診により2人が癌死をまのがれ癌によって亡くなる寿命より20年長生き出来たとします。2✕20÷100=0.4となり、検診を受けた群の寿命は80.4歳となります。これでは検診を受けない群の80歳と有意差無しになります。ではがん検診で寿命が延びないから無意味でしょうか?この2人にとっては早期発見早期治療出来た事は非常に意味があると思います。

「検診では見付ける必要のないがんばかり見付ける」という意見は、ある意味正しいとは思います。予後良好な甲状腺癌(乳頭癌)、PSA低値の前立腺癌などは検診でよく見付かりますが年齢や悪性度によっては治療しないこともあります。これを「見付ける必要のない癌」とされていますが、しかしそれは精査して最終診断がその結果であり、途中でやはり悪性度が高く治療に至るものもありスクリーニングとしてはやはりがん検診は意味があったと思います。

「がん検診では被爆により癌になる」というのは完全な言いがかりですね。こちらは後日被爆をテーマに記載します。


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