線虫検査とPET検診

『「線虫検査つぶし」であらわになった、PET検診の不都合な真実』という記事を見かけた。

あまりにも誤った記載が多いのでここで訂正指摘させてもらおうと思う。

では、論破します。

1点目『PET検診にかかわる医師やがん専門医の共通認識として、「PET単独では、早期発見できるがんは多くない」という事実がある。』の記載について。

→ 我々医者の認識は「PET単独で早期がんの発見は難しいことが多い」です。早期がんとはいわゆるステージ1などの転移のない初期の癌を指します。PETはFDGという薬が集まることを利用しますから、5mmくらいの小さい癌、早期がんを指摘するのは難しいです。しかし、1㎝程度の大きさであれば多くの癌が検出出来るようになります。そして想定外の病変を指摘できるという点において他の検査にはない効果を発揮します。ですから癌のステージング目的に保険適応として認められるのです。検診が無ければ癌はどう見つかるでしょうか?おそらく「急に体重が減ってしまった」「全身が痛くなった」これらの症状があってかかりつけ医に相談したり、しばらく様子を見て改善無く精査して見つかります。これらの症状があると転移が起きていることが多くステージ3,4などでしょう。それでは助からないことも多い、だから早期発見が大事なのです。「早期がんの発見」ではなく「がんの早期発見」が大事なのです。PET検査で早期がんの発見は難しいですが、症状が起きる前の癌の早期発見は出来るのです。そして当たり前のことですが進行癌はほぼ確実に発見できます。

次、『PETがあまり役に立たないがんは、ごく初期の原発がん(がんの始まり)、胃がん、食道がん、早期の子宮頸がん、スキルスがん(胃がん、一部の大腸がんと乳がんと肺がん)、腎臓、尿管、尿道、膀胱のがん(腎がん、膀胱がん、尿管がん、前立腺がん)、原発性肝がん(肝細胞がん・胆道がん)、脳や心臓のがん(脳腫瘍、悪性心臓腫瘍)、血液のがん(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)、5㎜以下のがんなどなど多岐にわたる。がん種ごとの患者数を単純に計算すると全体の80%以上にも及ぶのだ』の記載について。

→ 2点目『ごく初期の原発がん(がんの始まり)』『早期の』子宮頸がん、『5㎜以下のがん』これ、全部早期がんのことですね。何度も記載してまるでたくさんあるように勘違いさせてますが、文頭と末尾に離して記載してバレないように細工してますが、同じことを繰り返し記載しているだけ、、よろしくないですね。小論文なら減点対象です。

→ 『胃がん~(中略)~スキルスがん(胃がん、一部の大腸がんと乳がんと肺がん)』と胃癌を二回記載あり。壁肥厚、腫瘤を形成するような胃癌ならPETで指摘できますが、薄く広がったいわゆるスキルス胃癌では指摘できません。この文章で正しいのは『スキルス胃がん、一部の大腸がん』のみです(3点目)。スキルス乳癌というのはいわゆる硬癌を指しておりスキルス胃癌のスキルスとは意味が異なります。むしろスキルス乳癌はPETで検出が容易です(4点目)。スキルス肺癌という言葉ですが、私は肺癌を毎日数例、これまでに5000症例以上診ていますが聞いたことが無いです(5点目)。

『腎臓、尿管、尿道、膀胱のがん(腎がん、膀胱がん、尿管がん、前立腺がん)』の記載について。

→6点目。まるで8種類の癌を記載して見せてますが、FDGが尿排泄のために尿中RIによってPETで検出困難な癌があり、正しくは「腎癌、尿管癌、膀胱癌」の3種類です。尿道癌は非常に稀で数に挙げる理由がわかりません。そして前立腺癌は膀胱ではありません。

『原発性肝がん(肝細胞がん・胆道がん)』の記載について。

→正常な肝細胞が糖新生することもあり、癌化しても高分化(分化が保たれている、正常に近い状態の)肝細胞癌(HCC)は酵素によりFDG低集積となりPET検出困難となります。しかし、胆管癌(CCC)は由来が異なるのでFDG低集積とはなりません。原発性肝がんには肝細胞癌(HCC)、胆管癌(CCC)がありますが、PETで検出困難なのは高分化HCCで、後者は違いますから、原発性肝がん全てではありません(7点目)。

『脳や心臓のがん(脳腫瘍、悪性心臓腫瘍)』の記載について。

→ 脳の唯一のエネルギー源が糖分ですからFDGももちろんあつまってしまいます。ですから脳腫瘍は確かに検出困難です。そして心臓にも糖代謝のタイミングであればFDG集積が見られますからおそらく検出困難でしょう。しかし、そもそも心臓腫瘍は非常に稀(0.1%以下)でさらに悪性は稀(70%は良性)です。このようなレアな腫瘍を数に挙げる必要性がわからない(8点目)

『血液のがん(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)』の記載について。

→ 治療効果判定目的にPETを保険診療で施行できるのは悪性リンパ腫のみです。つまり悪性リンパ腫はPETが最も得意とする疾患の一つです。白血病の血中のみの病変であれば検出困難ですが、脾臓病変や骨髄病変、他臓器に腫瘤形成する場合にPETは有用です。多発性骨髄腫は骨髄病変の検出に優れています。完全に誤りです(9点目)。

ここまでをまとめますと、『PETがあまり役に立たないがんは、ごく初期の原発がん(がんの始まり)、胃がん、食道がん、早期の子宮頸がん、スキルスがん(胃がん、一部の大腸がんと乳がんと肺がん)、腎臓、尿管、尿道、膀胱のがん(腎がん、膀胱がん、尿管がん、前立腺がん)、原発性肝がん(肝細胞がん・胆道がん)、脳や心臓のがん(脳腫瘍、悪性心臓腫瘍)、血液のがん(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)、5㎜以下のがんなどなど多岐にわたる。がん種ごとの患者数を単純に計算すると全体の80%以上にも及ぶのだ』の記載の中に8カ所の誤りがあり、添削して残るのは『PETがあまり役に立たないがんは、スキルスがん(胃がん、一部の大腸がん)、腎臓、尿管、膀胱のがん、肝細胞がん、脳腫瘍、5㎜以下のがんなど』となります。だいたい5倍くらいに盛ってましたね。がん種ごとの患者数の計算も『80%以上』ではなくて『20%ほど』となります。やはり4倍ほど盛ってますね。

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