PET検査の得手不得手

PET検査で使用するFDGはフルオロデオキシグルコースという糖に似た薬です。悪性腫瘍の細胞は糖代謝が盛んですから、正常な細胞よりも多くFDGを蓄積(集積)し、そこから放出される放射線を画像化しています。癌があれば光って見えるという表現になります。

ですから、概ねの癌、悪性腫瘍には有効ですが、いくつか弱点もあります。

1.腫瘍が小さ過ぎればFDGがほとんど集まらないので検出できません。

2.一部の癌ではFDGが集まりにくいものがある。

3.高血糖、食後、糖尿病など糖代謝に影響があると画像が悪くなる。

4.癌に集まる薬ではなく、糖に似ている薬なので癌以外にも集まってしまう。

5.正常でもFDGが集まる臓器があり、癌の有無関係なく光るため検出できない。

ざっと思いつく限り上記の5通りです。抽象的な箇条書きでしたので一つずつ具体的に以下説明します。

1.腫瘍が小さ過ぎればFDGがほとんど集まらないので検出できません。

専門的には部分容積効果、過小評価と呼ばれるものです。検出する単位体積当たりに対して病変が小さければ集積が実際よりも小さく評価され検出できなくなります。具体的には5mm~1cmほどの癌は検出できないことがあります。巷では「どんな小さな癌でもPET検査で見つかる」などと宣伝していることもありますが、むしろ「1cm以下は検出できない」つもりでPET検査の画像を見るようにしています。ですから「PET検査で癌が無かった」と説明されても、それは「1cm超える粗大な病変はなかった」と思っていただいた方が良いと思います。

2.一部の癌ではFDGが集まりにくいものがある。

癌そのものの性質として糖代謝が低い組織がいくつかあります。ゆっくり成長するタイプの肺腺癌、グルコースを貯め込みにくい腎癌の一部や高分化の肝細胞癌などです。低悪性度の悪性リンパ腫も低集積となることが多いです。

3.高血糖、食後、糖尿病など糖代謝に影響があると画像が悪くなる。

FDGがほぼ糖なわけですから、高血糖なら競合しそうだなとイメージしやすいかと思います。血糖値250以上でFDG投与するとかなりぼんやりとした画像になることが多いです。また高血糖ではなくても食後すぐでは血糖を下げるためにインスリンが増えている状態ですので、FDGが筋肉へ集積してしまい、病変には集積しなくなります。膵癌で膵臓の機能が低下している、膵癌術後で機能していないという患者さんのPET検査はかなり評価に難しい画像になります。

4.癌に集まる薬ではなく、糖に似ている薬なので癌以外にも集まってしまう。

炎症に集まることが知られています。つまり、集積の程度のみで肺炎か肺癌かの区別はPET検査では出来ません。PET/CTのCTでの見え方、大きさに比しての集積の程度、過去画像との比較による経時変化、これらを総合的に評価して肺癌かどうか鑑別しています。自己免疫性膵炎という病気はしばしば膵癌と鑑別を要することがありますが、PET検査でもやはりいずれも集積してしまい、これだけでは区別は出来ません。ただし、自己免疫性膵炎はIgG4関連疾患という全身性の病変であることが多く、PET検査で膵臓以外の病変を検出し診断に寄与することはしばしばあります。

5.正常でもFDGが集まる臓器があり、癌の有無関係なく光るため検出できない。

糖を使う臓器、例えば脳です。小さな脳転移をPET検査で指摘するのは難しいです。FDGは尿排泄されます。ですから、腎、尿管、膀胱に集まりますから、これらの癌は区別がつきにくいです。胃は生理的集積があり病変の検出が難しいです。ですからPET検査の保険適応は「早期胃がんを除く全ての悪性腫瘍」とされています。

今回の内容はPET検査の有用性を考える上で大事なポイントですし、日々の診療でも問題になることですので、また後日追記させていただこうと思います。

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